『椿三十郎』

(C)2007「椿三十郎」製作委員会
●監督:森田芳光 製作:島谷能成、千葉龍平、早河洋、永田芳男 プロデューサー:大杉明彦、富山省吾、三沢和子、徳留義明、市川南 製作総指揮:角川春樹 原作:山本周五郎 脚本:菊島隆三、小国英雄、黒澤明 撮影:浜田毅 美術:小川富美夫 編集:田中愼二 音楽プロデューサー:石川光 照明:渡辺三雄 録音:柴山申広
●出演:織田裕二、豊川悦司、松山ケンイチ、鈴木杏、村川絵梨、佐々木蔵之介、林剛史、一太郎、粕谷吉洋、富川一人、戸谷公人、鈴木亮平、小林裕吉、中山卓也、風間杜夫、西岡徳馬、小林稔侍、中村玉緒、藤田まこと
●配給:東宝
●2007年・日本・カラー・119分・日劇PLEXほか全国にて12月1日より日本公開
●出演:織田裕二、豊川悦司、松山ケンイチ、鈴木杏、村川絵梨、佐々木蔵之介、林剛史、一太郎、粕谷吉洋、富川一人、戸谷公人、鈴木亮平、小林裕吉、中山卓也、風間杜夫、西岡徳馬、小林稔侍、中村玉緒、藤田まこと
●配給:東宝
●2007年・日本・カラー・119分・日劇PLEXほか全国にて12月1日より日本公開
黒澤作品のリメイクが氾濫する中での成功作
テレビや映画で黒澤明映画のリメイクが盛んになっている。そんな中、森田芳光監督が挑んだのは、黒澤作品の中では比較的喜劇的な要素の濃い時代劇。次席家老らの策謀を、椿三十郎と名乗る素浪人と9人の清新な若侍が暴き、藩を危機から救う痛快な物語だ。
森田監督は、漱石から宮部みゆきまで様々な原作に独自の解釈を加えて賛否を巻き起こしてきた。当世屈指の鬼才が巨匠の作品にどんな味付けを施すか。非常に興味深かったのだが、想像以上にオリジナルのテイストが再現されていた。テレビ版に比べ、森田版『椿三十郎』はリメイクとして成功といえるだろう。特に、織田裕二の三十郎は、三船敏郎の科白回しや仕草を正確にトレースし、しかも自らのものに消化していた。
森田監督は、漱石から宮部みゆきまで様々な原作に独自の解釈を加えて賛否を巻き起こしてきた。当世屈指の鬼才が巨匠の作品にどんな味付けを施すか。非常に興味深かったのだが、想像以上にオリジナルのテイストが再現されていた。テレビ版に比べ、森田版『椿三十郎』はリメイクとして成功といえるだろう。特に、織田裕二の三十郎は、三船敏郎の科白回しや仕草を正確にトレースし、しかも自らのものに消化していた。
黒澤版の欠陥までをも再現
ただ、森田演出は、黒澤の数少ない欠陥までをも再現しているようだ。例えば、若侍たちと三十郎が出会う社殿の場面。黒澤版では若き加山雄三や田中邦衛らが、三船敏郎の破天荒な立ち居振る舞いに、いちいち大仰に驚き、クソ真面目だが世間知らずな面が露わになる。彼らは同じ表情で一斉に一様の反応をする。森田は、黒澤版と同じ動きを松山ケンイチらに要求している。
好みの問題もあるのかもしれないが、私には、役者たちの動きがあまりにも整然としていて、とても不自然で不気味な感じがする。ファシズム国家のマスゲーム的とでも言おうか。黒澤演出の特長は、役者一人ひとりの動きを完璧に統御することで画面にダイナミズムをもたらす点にある。アクション場面などではこれが絶大な効果を発揮する。
好みの問題もあるのかもしれないが、私には、役者たちの動きがあまりにも整然としていて、とても不自然で不気味な感じがする。ファシズム国家のマスゲーム的とでも言おうか。黒澤演出の特長は、役者一人ひとりの動きを完璧に統御することで画面にダイナミズムをもたらす点にある。アクション場面などではこれが絶大な効果を発揮する。
森田の笑いのセンスは不発
しかし、笑いの場面では監督の統御ぶりが逆効果になる。笑うことを強制されているようでかえって笑えない。それが最も悪い形で現れたのが『まあだだよ』の「摩阿陀会」のモブシーンだ。黒澤は、笑いのセンスだけはいま一つだったと思う。笑いは秩序でなく混沌から生まれる。もとい。ただの混沌では笑えない。混沌とみえる秩序から生まれる。
森田はそれを最も熟知する監督の一人だ。力を抜いたり入れたりして笑いを呼び込むセンスは天才的。以前から『椿三十郎』はもっと笑える作品になると思っていた私は、森田監督のセンスが全開した新しい『椿三十郎』を期待した。しかし、中村玉緒の場面など一部を除けば、森田のセンスは抑えられ、黒澤的な強引な笑いが踏襲されることになった。
よく出来たリメイクであるだけに、DVDなどで自由にオリジナルが見られる時代に、なぜリメイクが必要なのかという問題が浮き彫りになった。
森田はそれを最も熟知する監督の一人だ。力を抜いたり入れたりして笑いを呼び込むセンスは天才的。以前から『椿三十郎』はもっと笑える作品になると思っていた私は、森田監督のセンスが全開した新しい『椿三十郎』を期待した。しかし、中村玉緒の場面など一部を除けば、森田のセンスは抑えられ、黒澤的な強引な笑いが踏襲されることになった。
よく出来たリメイクであるだけに、DVDなどで自由にオリジナルが見られる時代に、なぜリメイクが必要なのかという問題が浮き彫りになった。


































