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観る者をなつかしい気分にさせる、素直なタッチの台湾映画

2008/08/20

練習曲
●英題:Island Etude/2007年/台湾/カラー/108分/2008年8月23日からシネマート六本木ほかにて日本公開
●配給:エスピーオー
→『台湾シネマ・コレクション2008』公式HP http://www.cinemart.co.jp/taiwan2008/


社会に出る前の練習のような、自転車ひとり旅

(c)2007 Ziegfeld Films Co.,Ltd
(c)2007 Ziegfeld Films Co.,Ltd
 台湾映画である。ここしばらく、台湾映画の評判をあまり聞かないので、低調なのかな、と気になっていたが、これは小品だがさわやかな映画で、なんの気取りも力みもなく、ごくごく素直なタッチでこんな気持ちのいい映画を作れるのがいかにも台湾なんだなあ、となつかしい気持ちになった。

 台湾の南端に台北に次ぐ第二の都市である高雄があるが、そこの大学生のミン(東明相)という青年が、ひとりで台湾一周の自転車の旅に出る。彼には難聴という障害があって、もしかしたらそれが多少、彼を孤独にしているかもしれないが、明るい理性的な青年であり、とくに何か悩みがあってということでなしに、学生時代でないとやれない経験のひとつとして1週間ほどのこの旅に出たわけだ。たずさえているのは旅の必要品の他はギターひとつ。まあ、興に乗れば海辺でちょっと弾いてみようということだろうが、それも特にこだわっているわけではない。この旅自体、社会に出る前のちょっとした練習か助走みたいなものなんだろう。

「サヨンの鐘」との出会い

 まず太平洋岸を北上して西側を南下する。すべて海辺で、景色はじつにいいし、なにより爽快である。途中、いろんな人と知り合う。田舎の衣料工場の中高年の女工さんたちがクビ切り反対闘争を兼ねたピクニックみたいなことをしているのと一緒になったりするあたりがいかにも今の台湾らしい世相をかいま見せる。たぶん雇主が給料の安い中国本土に工場を移すことにして、何十年も雇ってきた女工さんたちを全員解雇したというようなことなのだろう。苦難に満ちた台湾の歴史の流れの中では、なんとなくほほえましいくらいの「闘争」である。

 出会った人たちの話のなかに、かって日本の植民地だった頃の話題がまじっている。そのひとつに「サヨンの鐘」の鐘が出てきたのにはびっくりした。戦争中、召集されて任地を離れる日本人の警官を見送って山を下り、谷川に落ちて死んだ高砂族のサヨンという少女の哀話である。この少女の親日的な気持ちを讃えて日本の役所が鐘を贈った。もう忘れられた植民地時代の昔話だと思っていたら、その鐘が名所案内のスポットのひとつになっている。

愛する郷土の良さを感じ取ろうとする気分を描く

 そんな、まあ、どうということもないようなエピソードをつらねているので、劇的な盛り上がりというようなことはない。そもそもそれがねらいではなく。あくまでもこの映画は、自転車でひとり、さわやかな空気を全身にあびながら愛する郷土の良さをまるごと感じ取ろうとする気分を描いたものであろう。その意味でいちばんいいのは、もっとさり気なく出会う人たち、道端で「しっかりしろ!」などと声をかけてくれる見知らぬ人々や、立寄った実家のおじいちゃんなどのかもし出す、親しさあふるる気分である。

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