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是枝監督が静かにとらえる平均的家族の姿

2008/06/27

●2007年/日本/ドルビーSR/114分/6月28日から、シネカノン有楽町1丁目ほかにて日本公開
●配給:シネカノン

家族が集う夏の一日、静かな無常観

 家族が幸せでいられるのはほんとうにわずかなあいだなのかもしれない。平穏な暮しの背後には必ず老い、死が潜んでいる。

 初老の両親と、もう独立した娘と息子、その子供たち。三世代が集う、家族の物語。『誰も知らない』(04年)で母親に置き去りにされた子供たちを描いて感動を与えてくれた是枝裕和監督の新作は、日本の平均的家族の姿を静かにとらえていて静かな感動がある。自分の家族を重ね合わせて見る人も多いだろう。

 夏。海の見える丘の上の両親の家に、久しぶりに子供たち——娘(YOU)と息子(阿部寛)とその家族たちが遊びに来る。

 父親(原田芳雄)は開業医だったが、いまは現役をしりぞいている。毎日、散歩以外にすることはないようだ。料理好きの母親(樹木希林)は、子供や孫が来て家の中が久しぶりににぎやかになったのでうれしそう。

 息子は、シングルマザー(夏川結衣)と結婚した。まだ夫であることにも、連れ子の父親になったことにも慣れていないようだ。絵画の修復という特殊な仕事もあってもっか失職中。両親にはそのことは言っていない。見栄もあるのだろう。父親とは昔から折り合いが悪い。

 父親は無用の人になったという思いからか不機嫌で、みんなが楽しく食事をしている時にも仏頂面をしている。母親だけがみんなに料理をふるまい楽しそう。

 是枝監督は、彼ら家族の1日を、少し距離を置いて丁寧に描いてゆく。夏の空、雲、サルスベリ、日射しのなかの緑の木々。時折カメラはふっと遠くを見る。瞬間、静かな無常観に染まる。

取りとめのないやり取りから伝わってくる家族のはかなさ

 説明的なセリフはないし、大仰な表現もない。家族は普通、大事なことはあまり話さないものだという思いがあるのだろう。

 それでも徐々に分かってくる。この家族にはもう1人、長男がいて、若い頃に、海に溺れた子供を助けようとして、子供は助けたが自分は死んでしまった。この夏、家族が集まったのは15年前に亡くなったその長男の命日のためだった。平穏に見える家族のなかに死があった。長男に先立たれた両親はさぞつらかっただろう。母親は生きている息子と墓参りに行き、そこでふと心の痛みを口にする。

 息子の死を悲しむ親。その両親にもいつしか老いが、死が確実に迫ってきている。母親と取りとめのない話をしている息子は、いずれ2人を見送らなければならないだろう。家族のはかなさが伝わってくる。だからこそ家族はかけがえがない大事なものになる。

丘の上の家、石段を上り下りして

 両親の家は丘の上にある。石段を、坂を上ってゆかなければならない。かなり急な石段。父親は散歩に出ると石段を下り、海を見に行く。あの急な石段をいつまで上り下り出来るか。

 1泊した息子の家族を、両親が、近くのバス停まで送ってゆく。両親にとっては今生の別れかもしれないが、無論、そんな大仰な別れ方はしない。いつものように取りとめのない話をして別れ、そして2人で坂道を上ってゆく。

 そして数年後。息子の一家が墓参りにやってくる。両親の死という厳しい現実はあえて見せない。気がつくと小さな女の子がいる。結婚したあとに生まれたのだろう。

 少し頼りなかった息子もどうやら夫であること、父親であることが板についてきたようだ。そうやって家族は続いてゆく。

 墓地の向うに見える光のなかの海が一家を小さく祝福しているようだ。

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