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いまもっとも注目していい監督、ポール・ハギス

2008/06/26

●原題:IN THE VALLEY OF ELAH/2007年/米/121分/2008年6月28日から、有楽座ほか全国東宝系にて公開
●配給:ムービーアイ

トミー・リー・ジョーンズの不退転のド迫力

(c) 2006 Elah Finance V.O.F.
(c) 2006 Elah Finance V.O.F.
 トミー・リー・ジョーンズは不思議な俳優だ。ごつい顔で、クソ面白くもないみたいなムッツリした表情をしていて、とりつく島もないようでありながら、それでいてなんとも言えない身近な親しみを感じさせる。たぶんあの、ぐっと不満を押し殺しているよう顔こそ、ニッチもサッチも行かない行き詰まりにじっと耐えているいまのアメリカ人の気持を最も雄弁に現しているのだろう。どんなにお先まっ暗でも、そうは思わないのがアメリカ人だ。俺は負けない、とぐっと胸を張る。インテリが胸を張っても虚勢に見えてしまうところが、このごついオッサンだと不退転のド迫力になる。わかるわかる、その気持わかる、という気になる。

戦争体験が、若い兵士たちの心を汚染するという真相

 というわけで、この映画は、トミー・リー・ジョーンズの演じる元海兵隊鬼軍曹が、いまのアメリカの情けない情況にぐっと歯をかみしめるようにして耐える姿を描いたものである。彼はいま、退役してアメリカの小さな町で警官をしているが、ある日、信じられないような知らせを受ける。イラクの戦場で海兵隊員として戦って帰還した息子が、部隊の宿舎から行方不明になった、というのだ。彼は急遽、その部隊のある町へ行く。そして町外れの草むらでこの息子が焼死体となって発見されるのに立ち合う。そして事件の真相を追求する。

 わかってくることは、イラクの戦場でのさまざまな非人間的な経験が、若い兵士たちの心を汚染し、非行に走らせているということである。軍人だったことに誇りを持ち、息子二人も軍人にした主人公はこの現実に直前して呆然となる。

アメリカ人が目をそむけたいところにマトをしぼって

 このストーリーは実際にあった事件にもとづいているようである。前作『クラッシュ』でいまのアメリカの社会のギスギスした面を手際よく鮮やかにさらけ出してみせたポール・ハギス監督はこんどはさらに、兵士の堕落という、アメリカ人が最も目をそむけたいところにマトをしぼって、脚本と製作も担当して追求している。いまもっとも注目していい若手だろう。

 戦場で兵士が異常な非人道的な経験をするというのは今にはじまったことではない。ただ昔は、平和な社会にもどってくればそこでは英雄としてもちあげられるか、少なくともご苦労さまとは言われた。それが癒やしになった。それがいま、そうはゆかない。お前のやったことは正しいことだったのか、という疑いの目にさいなまれる。そこのところをもうひとつ、グイッ、とつっ込みきれるかが次の課題ではないだろうか。

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