
東京の人は、大胆でクレイジー!
初めて東京を訪れたのは2001年。5本目の短編映画『Sons』が、「アメリカン・ショートショート フィルムフェスティバル2001」に出品された際のゲスト来日だった。その後も、このシンガポールの映画監督ロイストン・タンと日本とは、自作のロケ、 NHKとの共同製作など浅からぬ縁が続き、今ではすっかり日本通とのこと。今回、携え来日した『881 歌え!パパイヤ』も、日本の資本が入った作品。とはいえその中味は、極彩色渦巻く国民的超ド級の娯楽ショー“ゲータイ(歌台)”を扱った、100%シンガポール印の大エンタメ映画だ。そんな作品を撮ったタン監督に、7年前の初東京体験時の第一印象を聞いてみたのだが——返ってきた答えにしばし驚く。
「街中の人が強烈な色の組み合わせの服を着ていて大胆でクレイジー!」
ド派手で奇抜な衣装200着が乱舞する『881』の監督にそう言わしめたTOKYO……恐るべし。
「街中の人が強烈な色の組み合わせの服を着ていて大胆でクレイジー!」
ド派手で奇抜な衣装200着が乱舞する『881』の監督にそう言わしめたTOKYO……恐るべし。
初来日のときには、洋服を買い込みました(笑)

(C) Courtesy of Zhao Wei Films
今回の『881』だけでなく過去の作品を含め、タン監督の映画には、生理的ともいえる色への強いこだわりが感じられますが。
「確かに僕は人一倍色に敏感。ストーリーより先に色を考えてしまうほど、僕の映画にとって色は重要な要素ですね」
敏感だからこそ、まず東京の人間の服の色に目がいったともいえますか?
「それもありますが、とにかくシンガポールでは考えられない光景だったんです。たとえば真っ赤なパンツに強烈な黄色のTシャツを組み合わせるなんてことは、僕の国ではつい最近になってですよ。僕は、そういう色の組み合わせ方を通して、東京の人たちの強烈な個性や個々の主張を強く感じましたね。進んでいる! と思いました。で、我慢できなくなって、“その服はどこで買いましたか?”と聞きまくり、たくさん買い込んで帰りました(笑)」
道行く人にですか!? たとえばどの街で?
「主に恵比寿や原宿です。ショップのウィンドーのディスプレイも、きちんとしたコンセプトを持っていてセンスがよくて。今でもあちこちの店のディスプレイを見るのが楽しみですね」
「確かに僕は人一倍色に敏感。ストーリーより先に色を考えてしまうほど、僕の映画にとって色は重要な要素ですね」
敏感だからこそ、まず東京の人間の服の色に目がいったともいえますか?
「それもありますが、とにかくシンガポールでは考えられない光景だったんです。たとえば真っ赤なパンツに強烈な黄色のTシャツを組み合わせるなんてことは、僕の国ではつい最近になってですよ。僕は、そういう色の組み合わせ方を通して、東京の人たちの強烈な個性や個々の主張を強く感じましたね。進んでいる! と思いました。で、我慢できなくなって、“その服はどこで買いましたか?”と聞きまくり、たくさん買い込んで帰りました(笑)」
道行く人にですか!? たとえばどの街で?
「主に恵比寿や原宿です。ショップのウィンドーのディスプレイも、きちんとしたコンセプトを持っていてセンスがよくて。今でもあちこちの店のディスプレイを見るのが楽しみですね」
東京には、いい意味で、ある種の冷たさを感じます
監督は、30代の若さで、すでに世界各国の映画祭で60以上もの賞を受賞していますし、回顧展が企画されたり審査員を務めたりもしています。そんなことからもあちこちの都市に行かれているわけですが、それらと比較して東京をどうイメージしていますか?
「東京には、いい意味で、ある種の冷たさを感じます。いろいろな色があって音があってメディアがあって、そういうものが渾然一体となって演出する、クリエイティブでパワフルでクレイジーなクール! 常に新しいものを探求している印象があって、来日するたびに、あそこにもここにも行かなきゃと焦ります(笑)」
初来日時からクレイジーな印象は変わらないようで。でもそれは、今回、監督が描いたゲータイのクレイジーな様とは、ある意味、対極にあるともいえますよね。
「ゲータイは、旧暦の7月にシンガポールの各地で行われる先祖の霊を楽しませるための歌謡ショーで、泥臭いといえば泥臭いですからね。この作品は、幼い頃からゲータイのスターを夢見てきた2人組“パパイヤシスターズ”の活躍を柱に、ゲータイの魅力を伝えるために作ったもの。そこで歌われる数々の福建語の名曲と共に、やや衰退気味だったゲータイというものを、どうしても記録しておきたかったんです」
「東京には、いい意味で、ある種の冷たさを感じます。いろいろな色があって音があってメディアがあって、そういうものが渾然一体となって演出する、クリエイティブでパワフルでクレイジーなクール! 常に新しいものを探求している印象があって、来日するたびに、あそこにもここにも行かなきゃと焦ります(笑)」
初来日時からクレイジーな印象は変わらないようで。でもそれは、今回、監督が描いたゲータイのクレイジーな様とは、ある意味、対極にあるともいえますよね。
「ゲータイは、旧暦の7月にシンガポールの各地で行われる先祖の霊を楽しませるための歌謡ショーで、泥臭いといえば泥臭いですからね。この作品は、幼い頃からゲータイのスターを夢見てきた2人組“パパイヤシスターズ”の活躍を柱に、ゲータイの魅力を伝えるために作ったもの。そこで歌われる数々の福建語の名曲と共に、やや衰退気味だったゲータイというものを、どうしても記録しておきたかったんです」
東京と心の故郷をともに愛する、気鋭のクリエイター
劇中で描かれていたように、実際もド派手でキッチュな舞台が展開されるのですか?
「時代ごとにはやり廃りがあって、80年代は大袈裟で華やかな衣装ばかりでしたが、90年代は少し地味な路線に、そしてこの映画のヒット(本国で07年最大のヒットを記録!)をきっかけに、また派手路線が復活しました。そればかりか今は、お寺の縁日なんかに絡めて毎月どこかでゲータイが開催されているんですよ(笑)」
そこまで来ると、ゲータイ本来の意味が……。
「そうなんですけどね、僕としては主に若者が楽しんでくれているので嬉しいんです。僕が子どもの頃、ゲータイは大人から子供までが一緒楽しむイベントだったんですが、アメリカ文化が入ってきて、若者がどんどん離れて年配者だけのお楽しみのような存在になっていましたから。この映画で再びゲータイが盛り上がったかと思うと感無量です」
東京のクールなクレイジーさにシンパシーと興奮を感じる一方で、心の故郷ともいえる土着的なゲータイの熱狂も愛すタン監督。本国ではすでに公開された最新作『12蓮花』も、『881』との連作を思わせる福建語歌謡ミュージカル的作風の作品だとか。04年「TIME」誌アジア版で「アジアのヒーロー20人」のひとりにも選ばれた世界が注目する人物でありつつ、福建人としての自身のルーツへのこだわりも深く持つ。今後のシンガポール映画界の牽引者となるだろう、若き気鋭のクリエイターである。
「時代ごとにはやり廃りがあって、80年代は大袈裟で華やかな衣装ばかりでしたが、90年代は少し地味な路線に、そしてこの映画のヒット(本国で07年最大のヒットを記録!)をきっかけに、また派手路線が復活しました。そればかりか今は、お寺の縁日なんかに絡めて毎月どこかでゲータイが開催されているんですよ(笑)」
そこまで来ると、ゲータイ本来の意味が……。
「そうなんですけどね、僕としては主に若者が楽しんでくれているので嬉しいんです。僕が子どもの頃、ゲータイは大人から子供までが一緒楽しむイベントだったんですが、アメリカ文化が入ってきて、若者がどんどん離れて年配者だけのお楽しみのような存在になっていましたから。この映画で再びゲータイが盛り上がったかと思うと感無量です」
東京のクールなクレイジーさにシンパシーと興奮を感じる一方で、心の故郷ともいえる土着的なゲータイの熱狂も愛すタン監督。本国ではすでに公開された最新作『12蓮花』も、『881』との連作を思わせる福建語歌謡ミュージカル的作風の作品だとか。04年「TIME」誌アジア版で「アジアのヒーロー20人」のひとりにも選ばれた世界が注目する人物でありつつ、福建人としての自身のルーツへのこだわりも深く持つ。今後のシンガポール映画界の牽引者となるだろう、若き気鋭のクリエイターである。
ロイストン・タン
1976年、シンガポール生まれ。2002年に発表した『15』が、世界の映画祭で数多くの映画賞を受賞。03年に『15:The Movie』として長編化するが、政府の検閲にひっかかり、シンガポールでは国際映画祭で一度だけしか上映が許されなかった。以来、インディーズ作家的なスタンスで活動していたが、『881 歌え!パパイヤ』で、シンガポールで国民的大ヒットを記録。現在は、プロダクションを立ち上げ、精力的な活動を続けている。
『881 歌え!パパイヤ』
本国シンガポールで2007年のNo.1ヒットとなったエンタテインメント・ムービー。旧暦の7月に先祖の 霊を楽しませるためにシンガポール各地で盛大に開かれる、シンガポールの国民的歌謡ショー“ゲーダイ(歌台)”を舞台に、繰り広げられる多彩な人間模様をエキゾティックかつエネルギッシュな歌と踊りと共に綴られる。
●2007年/シンガポール/35mm/カラー/ヴィスタ/ドルビーデジタル/109分/2008年8月9日から、ユーロスペースほかにて順次日本公開
●配給:マジックアワー+チャンネルアジア
→公式HPhttp://www.881movie.com/
text by Izumi Tsukada
1976年、シンガポール生まれ。2002年に発表した『15』が、世界の映画祭で数多くの映画賞を受賞。03年に『15:The Movie』として長編化するが、政府の検閲にひっかかり、シンガポールでは国際映画祭で一度だけしか上映が許されなかった。以来、インディーズ作家的なスタンスで活動していたが、『881 歌え!パパイヤ』で、シンガポールで国民的大ヒットを記録。現在は、プロダクションを立ち上げ、精力的な活動を続けている。
『881 歌え!パパイヤ』
本国シンガポールで2007年のNo.1ヒットとなったエンタテインメント・ムービー。旧暦の7月に先祖の 霊を楽しませるためにシンガポール各地で盛大に開かれる、シンガポールの国民的歌謡ショー“ゲーダイ(歌台)”を舞台に、繰り広げられる多彩な人間模様をエキゾティックかつエネルギッシュな歌と踊りと共に綴られる。
●2007年/シンガポール/35mm/カラー/ヴィスタ/ドルビーデジタル/109分/2008年8月9日から、ユーロスペースほかにて順次日本公開
●配給:マジックアワー+チャンネルアジア
→公式HPhttp://www.881movie.com/
text by Izumi Tsukada








































