ヘッダーの始まり

グローバルナビゲーションの始まり
ホームニュース特集(選択中)インタビュー動画コラムレビューランキングフォトギャラリーピックアップ
最新映画情報V ブログ教えて!エンタ業界転職情報フロムジャパンV プラスメールマガジンプレゼント映画データベース
パンくず式ナビゲーション

『齋藤敦子が見たカンヌ注目作』
Vol.4デプレシャンの“UN CONTE DE NOËL”

2008/05/21
 アルノー・デプレシャンは91年に中篇『二十歳の死』でジャン・ヴィゴ賞をとって以来、フランス映画界期待の星でありつづけきた。残念ながら、その後、まだ大きな映画祭で大きな賞を受賞するには至ってないが、それでもデプレシャンが現在のフランスの映画作家を代表する一人であることは間違いない。

 コンペティションに出品された最新作“UN CONTE DE NOËL (A CHRISTMAS TALE)”の主役はひとつの家族——父(ジャン=ポール・ルシヨン)、母(カトリーヌ・ドヌーヴ)、長女(アンヌ・コンシニー)、次男(マチュー・アマルリック)、三男(メルヴィル・プポー)、甥(ローラン・カペルト)、長女の夫(イポリット・ジラルドー)、三男の妻(キアラ・マストロヤンニ)——である。この家族には傷がある。それは悪質な血液の病気に罹った長男に骨髄移植を受けさせるために次男が生まれたものの、血液型が合わず、結局、長男が死んでしまったという過去である。家族の落胆を背負って成長した次男(デプレシャンが好んで描く典型的な人生の敗残者。演じるのは『そして僕は恋をする』以来、彼の分身を演じてきたマチュー・アマルリック)は、劇場経営失敗の負債を肩代わりするかわりに、長女から家族の縁を切られてしまう。一方、そのしっかり者の長女も、精神状態の不安定な息子に手を焼いている。ある年、母親が悪性の血液の病気にかかり、骨髄移植のドナーになりえるのは嫌われ者の次男か、長女の息子かの2人しかいないことがわかる。家族はわだかまりを抱えつつ、クリスマスを過ごすために父母の住むルーベの家に集まるのだが……。

 トリュフォーの再来と言われただけあって、デプレシャンほどフランス映画らしいフランス映画を撮る人はいない。フランス映画にとって大切なのは登場人物であり、時にはプロットを犠牲にしても人物描写を優先する。デプレシャンも同様だ。この映画にもプロットらしいプロットはない。デプレシャンは俳優たちにシチュエーションだけ説明すると、あとは自由に任せてカメラの後ろに引っ込むと、俳優と俳優のぶつかりあいで、どんな化学反応が起こるかをニヤニヤしながら見守っている。そんな印象を受ける。どこが始まりでどこが終わりなのかわからない“
愚か”な人間達の悲喜劇。映画をストーリーで見る人にとっては理解できない世界かもしれない。けれどもフランス映画の真髄はこんなところにあるのだと私は思う。(5月21日 齋藤敦子)



齋藤敦子 映画評論家。パリで映画編集を学ぶ。フランス映画社宣伝部から90年にフリーとなり、ギャスパー・ノエ、ピーター・グリーナウェイの諸作品の字幕翻訳などを手がける。また「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「世界の映画ロケ地大事典」(晶文社)などの翻訳書も。カンヌ映画祭には83年から参加し始め、今年で23回目となる。

パンくず式ナビゲーション
広告エリアの始まり

フッターナビゲーションの始まり
フッターの始まり