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“完全な文系人間”が勝ち取った“極めて数学的な栄誉” 
アカデミー賞科学技術賞受賞!! 坂口亮独占インタビュー

2008/02/17
 2月24日(日)の授賞式よりも先に受賞者が決定していた、アカデミー賞科学技術賞の授賞セレモニーが2月9日(土)、ビバリー・ウィルシャー・ホテルで開催された。

 プレゼンターのジェシカ・アルバが名前を呼び上げ、今年最初の日本人オスカー受賞者となる坂口亮が華やかなステージに上った。

 小学5年から中学1年までアメリカで過ごしていたという坂口は受賞スピーチで流暢な英語を披露し、同僚やガールフレンド、両親などへ感謝のメッセージを送った。その様子はこれまでの日本人像を打ち破る、新鮮な姿だった。

 科学技術賞は、映画に貢献した重要な技術を開発した技術者に贈られる賞。坂口は、ジェームズ・キャメロンが設立したCGプロダクション、デジタル・ドメイン社において、同僚2名と共に「流体シミュレーション・システム」(水の動きを表現する特殊映像効果技術)を開発し、今回の授賞となった。

誰も作ったことのない映像を創るため
苦手な数学を中学レベルからやり直す

 授賞式のあと、坂口は仕事場でバラエティ・ジャパンの独占インタビューに応えてくれた。

Q.おめでとうございます。29歳という若さでの受賞ですが、率直な今の感想は?

「正直、実感はないです。一緒に受賞したダグ・ローブル、ネフィース・ベン・ザファーも言ってましたが、僕らは会社でいつもの仕事をしてるだけですから」

Q.受賞が決まったときはまずどう思いましたか?

「彼女に伝えなきゃと思いました」

 照れながら笑顔で答える様子に、優しそうな性格が垣間見える。カジュアルなシャツにカーディガンを羽織った姿はごく普通の29歳の青年だが、志の高さとこれまでの努力には舌を巻く。

「誰も作ったことのない映像を創りたくてアメリカに来たんです。ただ僕はもともと文系で、コンピューターとか数学がいちばん苦手だったんです。でもそれができないとすごい映像は創れないってわかって、それこそ中学生の数学からやり直しました。物理や数学的なバックグラウンドのあるダグやネフィースはもっと 楽だったでしょうけど、僕はまず勉強して、それを映像につなげなきゃいけなかったのがつらかった」

『ディープ・インパクト』に刺激され挑んだ
近年最も注目される視覚効果技術

 高校生の頃に観た『フィフス・エレメント』や『ディープ・インパクト』に刺激を受けた。『ディープ・インパクト』の水の映像に魅せられて、記事で「流体シミュレーション・システム」を知り、勉強を始めるが、それは数学が得意な人にとってすらひどく難解なテーマだったという。

「正直、つらい分野なんです、僕には。でもこれで自分の中にあった目標の、流体を用いての映像はつくれました。数学はもうこりごりかな、と(笑)」

 自ら難しいことに挑むのが好きという坂口はその苦手なジャンルでアカデミー賞を獲った。

 坂口らが開発した「流体シミュレーション・システム」は、『ロード・オブ・ザ・リング』『ピーター・パン』『デイ・アフター・トゥもロー』『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』、いちばん最近では『ライラの冒険 黄金の羅針盤』 など、多くのハリウッド大作で採用され、近年の視覚効果で最も注目される技術となっている。その証拠に今回の科学技術賞10のうち実に6つがこの流体シミュレーションに関連した技術が受賞しているのだ。
 
 かねてからCGでの水の表現は非常に難しいとされてきた。以前は物理的に間違った水の表現が多く、いつも身近にある水の動きだけに、観客はどうしても違和感を覚えてしまった。

「5年ぐらい前からですか、博士号を持った数学者や研究者たちが論文などで知識を提供するようになって、物理的に正しい水の表現ができるようになったんです」

観客に“仕事を気付かせない”のが
CGの仕事

 坂口らが開発したシステムによって、大洪水や大海原の迫力シーンの「嘘」が「現実」に変わった。

「僕らの一番の仕事というのは、観客に、僕らが裏でこんな仕事をしていると“気付かせない”ことですから」

 また、デジタル・ドメイン社の“社風”も、開発のプラスになったかもしれない。

「デジタル・ドメインはよく“人がいい”と表現されます。金曜日に“マティーニ・ナイト”っていうのがあって、社員が自腹でお酒を買って、勝手にバーをセットアップする。会社はどうであろうと自分達で楽しい環境をつくろうというカルチャーがあるんです」

次なる目標は外国人の上に立つ
リーダーとしての日本人

 目指していた映像表現をひとつ達成した坂口は、次なる目標も非常に高い位置に掲げている。

「今後は技術向上に加えて、より広い意味での映像のクオリティを上げるべく、リーダーシップの経験をもっと積んで行きたいですね。もともと人間関係には興味があって、今もリードという立場で仲間を統率する仕事をしています。僕の中の大きなテーマは、日本人として 外国人を率いることのできるリーダーになりたいということなんです。日本人で優秀な方はたくさんいる。でも文化的に外国人の上に立って指揮するっていうのはすごく苦手だと思うんです。だからこそ、そういうこともできるんだぞってところを見せたい」

 日本人と違い、権利を主張することや、社交的なことを重んじる外国人たちに対して一歩も引くことなく強いリーダーシップを発揮する——坂口の夢は、やはりどこまでも規格外だ。

インタビュー動画はこちら>>
text by Kiyoshi Suzuki (Variety Japan LA), photographs by Digital Domain, Atsuko Kohata(Variety Japan LA)
宇宙戦艦ヤマト? いえ『タイタニック』の模型です。というのもデジタル・ドメイン社は
キャメロン監督が設立者……(Click here!)
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坂口亮氏が重た気に持っているのはもちろん、あのオスカー!(Click here!)
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オスカーを持つこの腕の持ち主は、一緒に受賞した坂口氏の同僚の……(Click here!)
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『フィフス・エレメント』で使われた街の模型にもなぜか日本語の看板が……(click here!)
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ぬらりひょん? いえ、これが受賞をもたらした「流体シミュレーションシステム」の一部です……(Click here!)
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くじらのお腹の中のような会議室……実はデジタル・ドメイン社の設計はあの世界的建築家フランク・O・ゲイリーによるもの!(Click here!)
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会議室の外には映画で使われた小道具があり、遊び心にあふれているよう……が実は関わっている映画の内容が漏れないよう、パーティションは高い……(Click here!)
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坂口氏の部屋にはキラキラ光るオスカー像が2つも……(Click here!)
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