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『ニュートンは林檎から エンタテインメント・コンテンツ業界への投資アプローチ』
第4回 リスク&リターン
高いリスクにもめげずエンタメに出資する投資家にどう向き合うか

 
2008/05/03

白井久也
1996年東京大学経済学部経営学科卒業後、数々の証券会社を経て、2005年5月にモルガン・スタンレー証券㈱に入社。コーポレート・クレジット部にてプリンシパル投資業務に従事。特に、メディア・エンタテインメント・コンテンツ業界とのネットワークを生かし、当該業種への幅広い投融資を検討・実行。今般、メディア・エンタテインメント・コンテンツ業界の分野に特化したブティック型の投資および金融サービスを提供するホワイト・ノーツ( http://www.whitenotes.jp)を設立。

 コンテンツ・ファイナンスの打合せをしていると、いつも議論が白熱するポイントがある。投資家がどの程度の利回りを期待しているかというトピックになったときである。それまでは「がんばりましょう!」という穏やかな雰囲気であった会議が、この利回りの水準を口にした瞬間、一転する。

 純投資を考えている投資家が前提にする期待利回りは、おおよそ20%前後(あくまで個人的な見解)と言われる。「20%も!?」と思われるかも知れないが、投資家はこのリターンを要求する代わりに、20%程度のリスクも背負っている。

 ここでは、映画の製作資金として5億円が必要である場合を想定してみたい。

(1)Aプロデューサーは、5億円を銀行から借金で調達してきた。金利は5%で5年後には元本を返済する義務がある
(2)Bプロデューサーは、5億円を投資家から出資という形で調達してきた。期待利回りは20%であるが、元本割れするリスクを投資家は許容している


 映画製作資金として、AさんとBさんの調達手段のどちらが適切か。

 ポイントは、例えば5年後に5億円を必ず返済できる自信がある、と言えるか否かである。必ず返済できるのであれば、わざわざ20%のリターンを投資家に還元する必要はない。

 逆に、返済できる自信がない状況であれば、20%のリターンを投資家に還元する代わりに、元本割れの可能性に対するリスク・プレミアムを加味した出資という形を選択するべきかも知れない。

 (2)の、出資という製作資金の調達手段を取ったBプロデューサーのケースを、更に細かく見ていきたい。

 20%のリターンという水準が、どの程度のものかを考える(あくまでざっくりとした概念であり、実際の期待収益率の計算においては、流動性などを含め、様々な条件を考慮した細かい計算が必要になる)。

 弊社ホームページの開示データを参考にして試算されるMEC(メディア・エンタテインメント・コンテンツ)業界の上場株の期待収益率(=MEC関連の上場株に投資しようとする投資家が、一般的にどの程度の利回りを期待しているか)が7~8%程度であるので、ここでいう20%の水準は、約12~13%程度(=20%-7~8%)のリスク・プレミアムを上場株の期待収益率に上乗せしていることになる。必ずしも上場株の期待収益率とコンテンツ投資に求める期待収益率を同じ土俵で比較することはできないが、これら2つに投資する際の違いを洗い出していくと、コンテンツに投資をする場合の方がリスクは高いと言わざるを得ない。

 例えば、「上場株であれば売りたいときに売却できるが、コンテンツ投資は、自分の出資持ち分を自由に売却できない」、「コンテンツ投資の場合、情報開示制度が整備されていないのでプロデューサーのプランを信じるほかに詳細な検討する方法がない」など。この12~13%というプレミアムをいかに縮めていくかが、コンテンツ投資の環境を整備していくことの焦点だと思われる。

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